美意識はなぜ必要か。ビジネスで美意識を持つことの魅力

アートな世の中会議「美意識のないビジネスは駆逐される世の中へ アートが経済をどう変えるか?」山口周さん(経営コンサルタント)と室井俊二さん(大黒屋旅館代表)の対談を聞いてきました。

「私はこれがいいと思う」と言える美意識をもつ

「世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか? 経営における「アート」と「サイエンス」を書かれた山口さんですが、「美意識を鍛えてどうするの?」と受講者に問いかけました。
美意識を鍛えて、専門家がいいといっているものがいいと思うようになるということが、美意識を鍛えることではない。美意識を鍛えることで、その人にとって良いものを見つけることができ、人と違う意見が言えるようになることが必要ではないかといわれました。

上記著書と「劣化するオッサン社会の処方箋 なぜ一流は三流に牛耳られるのか」という著書でで言いたいことは、「すきなことをおやりなさい」ということだそうです。これだけだとなんでもいいの?誤解されそうですが、前提として「真、善、美」などの美意識を鍛え、自分の感覚を研ぎ澄まし、自分と向き合いながら、『本来の自分らしいこと』をしなさいということかなと理解しました。

美意識はなぜ必要か?世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?

1つは、美意識は、ビジョン、行動規範、経済戦略、表現などを表し、自分の物差しになるものです。なぜ鍛えるのかということは、エリートと呼ばれる人は、権力や財力をもつ、社会に影響が大きい力を持つと時にどう行動するか判断をするときに美意識を鍛えないと間違った方向に進むかもしれないから。鍛えるためには、絵を見る、VTS(対話型鑑賞法)、哲学、文学、詩などに触れることを挙げられています。

もう1つは、アートという直観、感性、美意識という部分は、差別化になるということ。サイエンス(分析、論理的、数値)や、クラフト(経験、知識)という部分は、正解をだすということにはたけているが、この2つだけだと、コピーできるので、コストとスピードでしか差をつけることができない。問題を発見したり、0から1を生み出すアート的センスを持つことで、お客様が気づいていないもの(アンケートなどでは発見できないもの)を生み出すことができる。

アートのある旅館、大黒屋の室井社長のアート哲学

山口さんのお話もいろいろ気づきがあり、本を読むのとは違う発見がありましたが、さらにそれを実践されている大黒屋の室井さんのお話を伺うことができ、よりアートとビジネスについての理解が深まりました。

室井社長は、社員面接でアートを使っているそうです。内容は詳しくお伝えしませんが、作品をうまく使って経営に生かされていることに感動しました。
大黒屋は、現代アートや、アート的要素を経営の資源として取り入れ、経営にいかすというスタイル、アートスタイル経営でリピート率73%を誇る温泉旅館。アート作品を旅館に置くことで、お客様を呼び込んでいるのではありません。

私なりの哲学をもち、試行錯誤していく中で、私の経営スタイルが「アートスタイル経営」となりました。経営の概念は ヒト、モノ、カネ、情報 を駆使して利益を生み出すことにあります。この4つの要素がアートと結びつく。これが私の経営スタイルです。

【ヒト×アート】作品から読み解ける感性、哲学、コミニケーションを通じ、作品のもつ力と教育とを結びつけ、大黒屋の場つくりを担う人材を育成します。
【モノ×アート】大黒屋の目指す保養の宿として作品は欠かせない存在です。モノ派作家菅木志雄の表現、哲学、思想に共感し、作品をもって場つくりをしています。
【カネ×アート】アート作品を置くこと自体がお客様を呼びこむ手法ではありません。美意識を持ってアートのある場をつくることが、私たちの目指すべきところです。これは文化を大切にすること、文化を次へつなげることでもあります。文化が先で経済が後。これによって社会づくりができると考えています。
【情報×アート】芸術家にとって表現する場を得るということは、物事の事情を人に伝える場を獲得することでもあります。アート作品から得られる情報、そして発信する情報が、また場つくりとして大きな役割を担っています。
「保養とアートの宿」をつくるということ、これがひとつの指標となり、経営の方向性が見いだされます。アートをもって教育をする、コミニケーションをとる、文化を発展させる、情報を得、そして発信する。これらの要素がエネルギーと化し私たちの目指す場つくりとなるのです。

http://www.itamuro-daikokuya.com/artstyle/management/

自分が社長になったときに、自分が楽しい旅館にしたいと、昔ながらの旅館を今のスタイルに変えていかれました。大黒屋では、今では有名な菅 木志雄さんの作品を取り入れられました。室井さんが菅さんにお会いしたときに、すごいアーティストだと感じたことがきっかけです。一見すると自分でもつくれそう?な菅さんの作品なので、お客様がわからないと言われたこともあるそうです。室井さんは、作品がなぜいいのか説明されるそうです。なぜアートを取り入れているのか、なぜこの作品なのか、自分の哲学や美意識を語ることでお客様に共感をうみだしたのだとお話を伺って感じました。
お話を伺って、大黒屋に一度行ってみたいと思いました。

買い物は将来残ってほしいものへの投票行為

「先進7か国の電柱地中比率を知っていますか?」と山口さん。先進国の首都では90%だけと日本は15%。日本は30年遅れているということでした。電気を効率的に低コストで届けるには電柱は良いかもしれませんが、景観という面が疎かになっています。日本という国が観光という面を売りにするのだとすれば、電柱が見えている景色は決して美しくなく、観光に来た人が写真を撮りたくなる、もう一度訪れたい風景ではないですよね。

「ものは日本ではもうあふれている。
1万円のものを10年買う10万のものを10年使うのも、同じ10万円。
どのように10万円を使うのがいいか、豊かな社会はどうすれば良いか。」と投げかけられました。

同じインテリアコーディネーターの香取美智子さんの「北欧のくらしのセミナー」を受けたとき、買い物は投票行為だと聞きました。買うという行為は、将来残ってほしいものを選ぶという行為だそうです。

豊かさは、ただ消費していくものではないと日々の生活で感じています。地球にある資源も限りがあります。私が仕事で扱っている家具やインテリアのアイテムも、同じです。私自身も何度も失敗して、安い家具や収納のためのプラスティックの小物を100円ショップで購入したことがあります。でも、それで空間や暮らしは豊かにならないと感じました。

海外のお住まいに行くと、アンティークなど古いものも大事にしています。とても素敵だなと思います。でも長く使おうと思うと、大事に使うことだけでなく、そのものもそれなりに丈夫さも必要ですし、デザインもよいものだったり、メンテナンスができるものであることが必要です。

またものを買うときに、自分の気に入ったものを選び、大事に使うこと。大事に使えるものを選ぶことが、これからの社会に求められると考えています。
お客様から家具を提案してくださいと言われます。ネットを見るといろいろ安価な家具もありますが、自分で触ったり見たことのない家具は基本的にすすめません。見た目だけはインターネットで判断できますが、本当にそれがお客様のためになるか疑問だからです。

山口さんや香取さんのお話を通じて、私自身も、これからの社会にを考え、できるだけ長く使ってもらえるもの、使って楽しいもの、見て嬉しくなる商品をご紹介したいと思いました。