美術館で、どんな風に作品を見ていますか? 私のアートの楽しみ方。ピカソとその時代 ベルリン国立ベルクグリューン美術館展2022

国立西洋美術館で開催中の「ピカソとその時代 ベルリン国立ベルクグリューン美術館展」を見に行きました。ピカソ、クレー、マティス、ジャコメッティと20世紀の四人の巨匠を中心とするコレクションで、76点の日本初公開作品があります。

実は、最近美術館に行っていませんでした。この展覧会は、久しぶりに「見たい!」と思い、一人だとついつい先延ばしにしてしまうので、知人を誘って行きました。作品を見た感想は、「実物はいい」です。

やっぱり実物はいい

今回特に印象に残った作品はアンリマティスの「シルフィード」という作品です。部屋の中にいる、一人の女性が描かれた作品です。仕事柄部屋のインテリアも気になったこともありますが、単純化された線で描かれた部屋と人物、そして色と線の表現全体から伝わってくる柔らかな印象がとても素敵で、じっくり見たくなりました。

その他にも展示の中で、いくつか素敵だと思う作品を見つけました。とても素敵だったので、お土産に絵葉書でも買おうかと思って見ると、いくつかの作品はありました。しかし、絵葉書の絵は、実物を見た時の印象とは全く違うので、買うのをやめました。はがきを見ても、実物を見た時の驚きや楽しさがありませんでした。

実物の良さは、いろいろありますが、

実物の大きさを体験できること

色、筆の動き、凹凸、素材を見ることができる

額も含めて作品を見ることができる

ことだと思います。

今回は、展示写真を撮ることができたので、写真を撮りました。その写真の方が、はがきより実物を見た時の印象に近く、作品を見た時の感動を思い出すことができると感じました。残念ながら、「シルフィード」の絵は写真を撮ることができない作品でした。それもあって、最初絶対買わないと思っていた厚さ3㎝もある図録を購入してしまいました。図録は、重かったのですが、展示では読むことができなかった作品の詳細も知ることができる内容となっていました。

こちらの作品も素敵でした。ピカソの「窓辺の静物、サン=ラファエル」。窓の奥に広がる海が爽やかで、色使いが素敵です。手前の静物画は不思議なモニュメントが置かれているのが気になる作品でした。部屋に飾るなら、この作品がいいなと思いました。

私のアートの楽しみ方

みなさんは、展示をどのように見ますか?

私は、一度全体を見てから、戻って気に入った作品をじっくり見る、興味がない作品は気力や体力があるとき見るようにしています。

一度全体を見てから、戻って気に入った作品をじっくり見る

私は一周一通り見た後、もう一度戻って作品を見返すようにしています。混んでいるときは、できなかったり、気力が無かったりしますが、混雑していないときはそうしています。戻ってもう一度作品を見ると、やはり自分が気に入った作品に目が留まります。そこで、もう一度ゆっくりその作品を見るようにしています。そうすると、一回目では気づかなかったことに気づくことがあります。

下の絵は、パウル・クレーの夜明けの詩。ラグ見えるの模様のように見える造形が、それぞれ何を表しているのかしら?と想像しながら見る事ができた作品です。ブルーとベージュの色も好きな組み合わせです。ついついインテリアとして飾ることを想像しながら、見てしまいます。

興味がない作品は気力や体力があるとき見る

美術館を見回すと、いくつかはすごく目を引く作品に出会うことがあります。全く興味がわかない作品もあるので、自分が興味を持つ作品をじっくり見るようにしています。気力や体力がある時には自分が興味の無い作品も時々足を止めて見るようにしています。好きじゃない絵は、疲れていると見る気がおこりません。

今回の展示は見て楽しめる展示でした。特にピカソの絵が、色、描写の仕方が変わっていくのを見ることができましたし、全く同じ女性を描いたと思えない人物画もありました。特に目を引いた女性は、緑色のマニキュアをつけたドラ・マール。この目力はすごい!引き寄せられます。

アートの見方というのは特にはないと思っています。でも見方がわからない、他のいい方法ないかしらと悩む方がいらっしゃるのであれば、下記をお試しください。

自分だったらどんな風に描くだろうと考える

どんな気持ちや思いで描いたのだろうと想像する

どのような気持ちになる?

少し距離をとって遠くから全体を眺めてみる

自分だったらどんな風に描くだろうと考える

自分だったらどんな風に描くだろうと考えることです。自分ごとに置き換えて見てみると、自分だったらこんな風に表現するかな、できるかななんて考えてみてください。下の作品は、マティスのオバリンの花瓶。ささっ描かれたような作品の筆遣いを見て、楽しくなります。リズミカルに筆を動かす状況が見えてくるようです。

どんな気持ちや思いで描いたのだろうと想像する

アーティストはなぜこんなふうに書こうと思ったのだろう。なぜこの色を使おうとしたのかな。といろいろ疑問や思うことが出てくると思います。それをきっかけに見るのも楽しいです。下の作品は、クレーの黄色い家の上に咲く天の花。兵役に服したクレーは、破壊された軍用機の翼部の亜麻布を製作に使っていたそうです。きれいな色で描かれた作品から、どのような思いで描いていたのだろうと、当時の状況を想像してみるとまた違って見えます。

どのような気持ちになった?

よく分からない作品については、これを見たらどんな気持ちになった。どんな気持ちがする?と自分に問いかけるのも一つの方法です。

実際その絵が語っていることとは違うかもしれませんが、アーティストは絵を見る人の気持ちを想像しながら描いていると思います。なので、色や形から自分が何を感じるかも、アート見る手助けをしてくれるのではないでしょうか。

少し距離をとって遠くから全体を眺めてみる

作品を少し離れたところから、眺めて見るのもおすすめです。遠くから作品を見ると、それを近くでじっと見た時とは違う印象を受けることがあります。また、その横の作品とのつながりや違いに気づいたり、空間としての面白さも体験できたりします。

下の作品は、手前がピカソの鶴の像。奥は、マティスの縄跳びをする青い裸婦。作品越しにみる作品も面白いと思います。こちらの作品は、シンプルな造形、わかりやすいもの、色使いが楽しい作品も多く、子ども達にも楽しめそうですね。

下の作品は、ピカソの雄鶏。鳴き声とともに、今にも飛び掛かってきそうな勢いを感じます。知人に「これ好きです」という話をしていたら、近くのご婦人もうんうんとうなづいてくれました。

以前は子ども美術館によく連れて行きましたが、中学高校生となると部活があったり友達との予定があったり、また親と一緒に行きたくない、美術には興味がないと言い出したりします。このぐらいの年齢になると、本人の興味がないとなころに連れて行くのは難しいのですね。いやいや連れて行くとろくなことにならないので、無理には連れて行こうとすることはしていません。

でもいつか、昔そういえばアートを観に行ったなあ…と、思い出してくれると嬉しいなあと思っています。その時の様子や取り組みは、本にまとめました。

小さなお子さんにアートに触れさせたい、自分もアートを楽しみたいという人に後に楽しく関われるようなヒントを詰め込みました。また先ほど紹介したアートの見方、楽しみ方、はじめ方について書いていますので、ご興味があれば読んでください。

今回の展示は予約制での入場だったために混雑していなくてゆっくり作品を見ることができる展示でした。1月までの開催になっていますので機会があれば是非ご覧ください。

ピカソとその時代 ベルリン国立ベルクグリューン美術館展

https://picasso-and-his-time.jp/

会期 2022年10月8日(土)~2023年1月22日(日)

開館時間 9:30〜17:30 毎週金・土曜日:9:30〜20:00 ※入館は閉館の30分前まで

休館日 月曜日、10月11日(火)、12月30日(金)-2023年1月1日(日)、1月10日(火)(ただし、10月10日(月・祝)、2023年1月2日(月・休)、1月9日(月・祝)は開館)