コーポレートカラーのピンクがアクセントのすっきりととのうオフィス 事例紹介

オフィスのリフォームを手がけました。今回のプロジェクトは、「会社のイメージアップ」「すっきり整う収納」「地震でも安心できる安全性」、そして「社員がスムーズに働けるレイアウト」を実現することが目標でした。多くの試行錯誤がありました。そのエピソードを事例写真とともにご紹介します。

【デザイン編】コーポレートカラー「ピンク」との奮闘

リフォームで最も頭を悩ませたのが、カラーコーディネートです。壁の色(オレンジに近い黄色)、照明、ドア、ブラインドは現状のまま変わりません。その中で、難しかったのがビビッドなコーポレートカラーである「ピンク」色をどのように取り入れるかです。

理想の雰囲気を求めた椅子選びのジレンマ

女性が中心のオフィスなので、明るく、楽しく、かわいい雰囲気にしたいと考えていました。当初、オフィスのチェアにコーポレートカラーのピンクを取り入れたいと考えたのですが、ちょうどいいピンク色のチェアは、脚や背が黒い色でした。ビビッドなピンクと強い黒の組み合わせは、目指すかわいい雰囲気とは異なり、色の印象が強くなりすぎてしまうジレンマがありました。

さらに、他にも商品がないか探しましたが、コーポレートカラーに近い理想のピンク色のチェアは選択肢が非常に少なく、価格や機能面とのバランスを考えると、希望通りの商品を見つけることができませんでした。そこでピンクに固執せず、「暖かな色合い」で探すことにしました。既存の壁の色との相性も考慮し、最終的に選んだのは優しい印象の「コーラルピンク」でした。

やっと決まったと思ったのもつかの間、チェアを見に行ったショールームで、チェアの足が大きいことに気づきました。既存のデスクのチェアの入る幅が60㎝しかなかったのです。デスクの引き出しにぶつからないよう、椅子のキャスター部分の幅が広すぎないものを探すことになりました。複数のショールームにも何度も足を運びました。

会社の顔となるエントランス。オリジナル壁紙への挑戦

次に、お客様をお迎えするエントランスで、会社の印象をどうデザインするかを考えました。ここでもピンクは非常にインパクトが強いため、使う色の分量や見せ方が重要です。当初は花や植物のデザインも検討しましたが、「会社らしさ」を表現するため、ロゴマークをうまく活用できないかと考えました。そして行き着いたのが、ロゴマークを小紋のような柄で繰り返し配置した、オリジナルの壁紙シートです。

これは既製品ではないため、すべてが手探りの作業でした。デジタルプリントなのでサイズは自由に変えられますが、元のロゴデータを大きく引き伸ばすと、デザインの線が太くなり、野暮ったい印象になってしまいます。また、その面に設置する会社のサイン(看板)が目立たなくなるのも避けたい。そのバランスを考え、最終的に現在の小さな柄に決定しました。

サイズ感を確認するため、実際にいくつかの大きさでサンプルを印刷し、壁に貼り見え方を検討しました。しかし、広い面積に貼った際の印象や、照明の当たり方による見え方の違いまで完璧に予測するのは困難でした。特に、ピンクと白の繰り返しが「目にチカチカしないか」という不安は最後までありました。

不安と期待の中で完成したエントランスは、イメージ通りの仕上がりとなりました。壁紙だけを見ると多少刺激的に感じる気もしましたが、会社のサインが設置されると、サインが引き立ちました。さらに、玄関前の家具や小物が入ると、壁紙の柄が程よく感じられました。エントランスのチェアは、コーポレートカラーに合わせて張地を選びました。チェアは、コンパクトでかわいらしい形のものにしたいと探した商品です。

【機能性・安全性編】働きやすさと安心のための工夫

デザインだけでなく、社員の皆さんが日々安心して効率的に働ける環境づくりも重要なテーマでした。

地震対策と「見せない収納」で、すっきりと安全な空間へ

お客様からの「地震に強く、安心できるオフィスにしたい」というご要望を受け、収納計画を見直しました。以前のオフィスでは壁面に収納家具が並び、地震の際の転倒が懸念されていました。そこで今回は、収納家具の8割以上を壁に固定。さらに、新たに設けた物置スペースでは、収納家具同士を連結することで、転倒しづらい工夫を施しています。

また、以前は収納の上に置いた段ボール箱のシルエットが、半透明のパーテーションに映ってしまうという課題がありました。今回はそれらが見えない不透明なパネルを採用したことで、収納の上部も有効活用しつつ、外からは見えないすっきりとしたオフィス空間を実現できました。そして、パーテーションに下地を入れてもらうことで、家具を壁に固定できるようにもしました。写真は、収納同士をつなげた物入の施工後の写真です。これらの棚がぴったり設置できるよう、パーテーションの寸法を計画しました。

作業効率を上げるレイアウト

プランニング段階では、社員の皆さんの日々の動きを考慮しました。それぞれの作業があまり移動せずに完結できるよう、物の置き場所や机の位置を見直し、互いの動線がぶつからないよう計画しました。社員の方々に実際の作業をイメージしてもらいながら微調整を重ね、最適なレイアウトを探しました。

【施工・実務編】見えない場所での挑戦と多くの協力

今回のリフォームは、住宅とは異なるオフィスビル特有の制約も多く、一つひとつ確認しながら進める必要がありました。

限られたスペースと時間との戦い

オフィスでは、スプリンクラーや煙感知器などの防災設備が天井に設置されており、パーテーションを立てる位置や高さに制限があります。こうした制約と、理想のレイアウトとのバランスを取るため、いくつものプランを検討しました。

荷物がある状態」での工事という難題

今回のプロジェクトで特に困難だったのが、工事の進め方です。オフィスビルでは、音や匂いの出る工事は土日祝日にしか行えません。さらに、社員の皆さんは業務を続けながらのリフォームとなるため、オフィスの荷物の約半分は室内に残したまま工事を進める必要がありました。

床を張り替える際は、今あるデスクや収納家具、そして中から出した段ボールを避けながら作業するという、非常に手間のかかる状況です。この条件をお話しした時、工務店の担当者の方がとても困った顔をされていたのを覚えています。最終的に、この難しい状況に柔軟に対応してくださる工務店さんに施工していただくことになりました。

この他にも、廃棄する家具の業者選定や搬出の手伝い、工事車両の駐車場手配、そして納品時の立ち会いまで、課題は数多くありました。プロジェクトが始まった当初は、「本当にこの計画は実現できるのだろうか」と、関係者全員が少し不安な気持ちを抱えていたと思います。しかし、工務店、職人さん、片付けサポートの方、そして社員の皆様、みんなで協力してすすめたからこそ、乗り越えられたと思います。無事に納品が完了し、今はほっと一息ついています。この新しいオフィスが、社員の皆様にとってより快適な場所になることを心から願っています。

写真は、エントランス横につけたモスのディスプレイです。オフィスの緑化と演出のため、生きているモスを飾りました。真ん中のピンクは、もちろんコーポレートカラーに近い色のピンクです。